丹生・玉村投手、敗れて涙ぬぐう仲間に「笑って終わろうぜ」 高校野球福井大会決勝

毎日新聞

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試合後、敦賀気比の上間洸太主将(左)と健闘をたたえ合う丹生の玉村昇悟投手


 「笑って終わろうぜ」。25日にあった第101回全国高校野球選手権福井大会決勝後、0―3で敦賀気比に敗れた丹生(にゅう)の玉村昇悟投手(3年)はベンチで涙をぬぐう仲間に声を掛け、健闘をたたえた。その顔はどこか晴れやかだ。「どっちが勝ってもおかしくない好試合だった。それに、みんなで楽しく野球ができたのは何よりの宝物だから」。シード校2校を破り躍進した今大会。胸を張って迎える「丹生旋風」のフィナーレだった。


 小学3年の時、三つ上の兄寛太さん(20)の影響で野球を始めた。肩の強さは生まれつきで、母小由美さん(50)は「保育園でドッジボールをしていた時、速い球を投げて大人たちを驚かせたことはよく覚えています」と振り返る。

 生まれ持った才能に磨きをかけるように球を投げ込み、自宅周辺のランニングは小学生から毎晩のように続ける。地元の友達と白球を追える丹生ならではの環境とやりがいも手伝い、その球速をぐんぐん伸ばしていった。

 最速147キロの速球と変化球を自在に操る左腕は「大会屈指」とも評され、強豪校を次々と破る原動力になった。

 この日は三回に甘く入ってしまった直球を捉えられ、勝敗を分けた。それでも、以降は冷静に要所を締め、計10奪三振、122球で完投した。5試合計52奪三振の大会記録も達成した。

 「結果は悔しいが、たくさんの声援を受けて試合ができたのは本当に幸せ。野球を楽しむ丹生らしさも貫けた」。表情と言葉から充実感をにじませた。試合後、敦賀気比の上間洸太主将(3年)に千羽鶴を手渡し、全力の夏を終えた。