高齢者ドライバーによる事故例

最近ニュースなどで高齢者ドライバーが関係する交通事故の報道をよく目にします。

記憶に新しいところで4月19日に起きた池袋での交通事故。この事故・事件をきっかけに高齢者が免許証を自主返納する動きが多く見られるようになっている。

 

同様の交通事故は最近になって増えたのか?答えはNO。

そもそも高齢者ドライバーが関係する交通事故は以前より多く起きていたけれど、全国ニュースなどで報じられることは稀で、そのほとんどが地域ローカルニュースまたは保報道すらされなかった。

 

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高齢者ドライバーが関係する事故例

通院の送迎で無理な進路変更!運転者死亡

夫を亡くした夫人の為友人の老人が病院まで送迎。地域は過疎地の為バスも少なく、タクシーは高額となるため。片側2車線の右側車線からいきなり左端の側道に進路変更。運転手(82歳)死亡。同乗者(85歳)大けが。相手側運転手軽傷。
前年にも追突事故を起こしており、家族は加齢で運転能力が衰えていたことを感じていたが、運転をやめさせることにはためらいを感じていた。 (2006年 兵庫県

 

免許返納間際、正面衝突!被害者半身不随。

運転歴40年のベテランドライバー(76歳)。高齢者の運転中の事故が多いことを気にし、そろそろ運転はやめようと思い始めていた。自家用車でゴルフに行く際、国道でカーブを曲がりきれずセンターラインから飛び出し、対向車と正面衝突。本人(76歳)大けが。相手側運転手大けが、相手側同乗妻死亡、子供半身不随の重い障害。(奈良県

 

高速道路逆走!警察に「自分は悪くない!」

病院へ行こうと車を運転していた男性(82歳)、いつも右折する交差点を通り過ぎてしまった。「どこかで曲がらなくては」焦っているうちに誤って高速道路の進入路に入り込みETCで料金所を通過。高速道路に入った事を認識できずいつの間にか本線を逆走。通常通りに高速道路を走って来た車と遭遇、通常走行車が奇跡的によけたものの中央分離帯に衝突、運転者同乗者とも軽傷。逆走の運転手(82歳)は事故を起こした後も走り続け10キロも走行した。110番通報で駆け付けた警官に逆走を認めず、「事故も違反も一度もしたことは無い、俺は悪くない」と繰り返した。(2007年 香川県

 

高速道路逆走!帰省中家族危機一髪!運転者「覚えていない」

群馬県の関越道でお盆のさなか家族を乗せた男性運転手(40歳代)が前を見ると逆走してくる軽トラック、とっさにハンドルを切って回避。男性の車はスピンして中央分離帯と他の車に衝突してストップ、すぐに煙が充満するが脱出には時間を要した、やっと子供が脱出できたその直後に一気に炎上。軽傷だったものの子供たちは死の恐怖から精神的ショックを受け夜も眠れなくなってしまう。事故原因の軽トラックは、そのまま走り去り3日後に警察の捜査で運転者の男性(75歳)が判明。男性は取り調べに対して「覚えていない」と答える。翌日男性は認知症と診断され免許を取り消される。(2005年 群馬県

 

ブレーキとアクセルの踏み間違え。夫が妻を

永い間運転していたマニュアル車を新型のオートマチック車に乗り換えて2か月。妻(80歳)と一緒に行きなれた自宅から3キロのところにある大型スーパーへ運転する男性(79歳)。駐車場に車を止めて妻を降ろして自分も車から降りようと。止めた自分の車が車止めまでまだだいぶ離れているのに気が付く「もう少し前に動かそう」。アクセルを踏んでいなくても車が前に動き出す「クリープ現象」慌ててブレーキを踏んだつもりで、アクセルを踏み込む。車は目の前に並んでいた買い物客の列に突っ込み、3歳の少女を含む4人に怪我を負わせました。妻(80歳)は車の下敷きになり死亡。(2006年 長野県)

 

電器店に車突っ込む 一旦止まるがさらに奥まで

「突然、ガシャンと大きな音がして車が店に入ってきた」と話すのは電気店の店主の男性。市内に住む男性(78)が運転する軽乗用車が、後ろから壁面のガラスを破って店舗内に突っ込んだ。中にいた客の夫婦 夫(84)と妻(79)が、胸を強く打ち、店員(34)もガラス片で足を切り、いずれも1週間のけが。警察の調べに運転していた男性は「アクセルとブレーキを踏み間違えた」と話している。店内にいた男性によると、突然大きな音がしてバックで車が店に突っ込んできて、一度止まったがその後さらにバックして店内に5メートルほど突っ込んだ。(2012年 三重県

 

新東名を逆走18キロ 「道を間違えたので戻った

開通したばかりの新東名高速道路で「車が逆走している」と110番通報があった。静岡県警高速隊のパトカーが路肩を逆走中の軽乗用車を停止させ、運転していた男性(84)に交通反則切符を交付した。警察によると男性は1人で運転し新富士ICから新東名に進入し、新清水ICの料金所の手前でUターンし逆送したようだ。「道を間違えたので戻った」と話しているという。逆走した距離は約18キロで、時速70Km程度での走行として約15分間も逆走を続けたことになる。運良く事故は起きなかった。(2012年 静岡県

 

自宅の車庫から暴走

市道から自宅の車庫に軽自動車を駐車しようとしていた男性(86)は、車の近くを自転車が通ったのに驚き、ブレーキとアクセルを踏み間違えた。軽自動車は約50メートル暴走して植木鉢などをなぎ倒し、立ち話をしていた歩行者ら男女5人(67~83歳)を次々とはね、田んぼに突っ込む形で止まった。数メートルはね飛ばされて田んぼに落ちた男性もいた。78歳の男性と71歳の女性が頭を強打するなどして重傷。運転者の男性は「自転車が来たので止まろうとしたが、ブレーキとアクセルを踏み間違えた」と話している、(2012年 大阪府

 

駐車場の段差乗り越え暴走

ショッピングセンターの駐車場からバックで乗用車を出そうとしていた男性(79)は、切り返しのため前進しようとした際に、タイヤが段差に引っかったため、段差を乗り越えようとアクセルを踏み込んだ。乗用車は段差を乗り越え、付近にいた人を巻き込んで、設置されていた現金自動受払機(ATM)に突っ込み止まった。6人が巻き込まれ2人が足の骨を折る重傷を負った。駐車場と道路の境界には高さ10センチ程度の段差があった。(2012年 千葉県)

 

高速道路4台絡む多重衝突

首都高湾岸線有明ジャンクション(JCT)付近で、トレーラーと3.5トントラック、ワンボックス車など4台が絡む多重衝突事故が発生した。渋滞の最後尾で減速していたワンボックス車に男性(70)が運転するトラックが追突、ワンボックス車はそのまま前のトレーラーに衝突し、トレーラーとトラックに挟まれ大破した。救出には時間がかかり、ワンボックス車の6人のうち、運転手を含む4人が死亡、2人が重傷を負った。警察によると運転手は「前をよく見ていなかったため、ぶつかった」と話している。(2012年 東京都)

 

NPO法人高齢者安全運転支援研究会より

 

 

認知症の人や高齢者が事故や事件を起こした場合の法的責任

認知症の加害者が事件や事故を起こした場合、どのような刑罰になるのか?

犯罪の成立には責任能力が必要。犯罪行為時に善悪の判断ができず、自分の行動を制御する能力が欠如している状態を『心神喪失』といい、心神喪失状態の行為を処罰することはできません。

善悪の判断や、行動を制御する能力が著しく低い場合のことを『心神耗弱』といい、心神耗弱者の行為については刑が減刑されます。

例えば、認知症の状態で自動車を運転し、傷害事故を起こした場合には、過失運転致傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)が成立します。しかし、心神喪失であれば処罰されませんし、心神耗弱であれば刑が減刑されます」

 

過去の判例

過去の高齢者による事件、事故はどのように判断されているのだろうか?また、認知症で罪に問われなかった判例などはあるのだろうか?

 

2016年に集団登校中の児童の列に軽トラックが突っ込み、7人が死傷した事故。運転していたのは88歳の男性。自動車運転過失致死傷容疑で送検されたが、不起訴処分になりました。男性はアルツハイマー認知症と診断され、刑事責任を問えないと判断されたとみられます。

【その他、減刑された判例

  • 80代後半の男性がデパートで起こした窃盗事件。犯行当時、認知症の影響で行動制御能力が著しく減退しており、心神耗弱状態であったとして減刑
  • 30代女性の窃盗事件で、女性が認知症心神耗弱状態にあったということで刑を軽くした。以上のような例があります」