乃木坂46の堀未央奈が映画初主演 やっぱり私は女優

2013年3月に2期生として乃木坂46に加入し、同年11月、シングル『バレッタ』のセンターに抜てきされて脚光を浴びた堀未央奈。その後、選抜落ちを経験するなど苦労人として知られる堀が、『ホットギミック ガールミーツボーイ』(以下、『ホットギミック』)で映画初出演にして初主演を飾った。白羽の矢を立てたのは、小松菜奈菅田将暉を主演に迎えた『溺れるナイフ』(16年)でメジャーデビューした新鋭・山戸結希監督だ。
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「お話をいただいたときに、まずはお会いして、お話しすることになりました。山戸監督は乃木坂46の『ハルジオンが咲く頃』(16年)のミュージックビデオ(以下、MV)を撮られていたのですが、私は監督の作品が大好きで──小松菜奈ちゃんが好きというのもあって『溺れるナイフ』を映画館に見に行ったんですが、映像や音楽に普通の恋愛映画では感じえなかった感情を抱かされ、『山戸監督ってどういう方だろう』とずっと気になっていたんです。

だから、2年ぶりにお会いしたときは、緊張と同時にうれしくて。1対1で、1人の女性としての思いや映画についてお話しできて、最終的には『作りたいもの、見えてるものが一緒だね』と言っていただき。そこがスタートでした」

山戸監督は堀の起用理由について「MVでご一緒したとき、端にいたのに強く印象に残っていました。撮られることへの渇望、真剣さの純度…。一番距離が遠いはずなのに訴えかけてくる力がありました」と話す。それを伝えると…。

「本当ですか、うれしい!(笑)。『ハルジオンが咲く頃』は、私が選抜復帰したばかりで、3列目の端にいて、『乃木坂46って何なんだろう?』『自分には何があるんだろう』って葛藤していて…そういうもやもやを見抜いてくれたんだと思います」


■監督と一緒に戦う気持ちで
原作は相原実貴の少女マンガで、堀が演じたのは主人公の成田初。口は悪いが優しい亮輝(清水尋也)、幼なじみのモデル・梓(板垣瑞生)、幼い頃から守ってくれた兄の凌(間宮祥太朗)という3人の男性との間で揺れる高校2年生だ。ナチュラルなたたずまいで、みずみずしい演技を見せる。

「3人の男の子の間でキュンキュンしてしまう気持ちも、自信がなくて意味もなく自分を追い詰める心情も、男の子と出会って強くなっていくところも…食い入るように原作を読みましたが、この物語は初ちゃんの1から100までの変化が描かれていて、そんな初ちゃんにとても共感できました。

この作品の前、『ザンビ』というドラマ(19年1月期)で初めてちゃんとお芝居をしたんです。そのときに『演じるってこういうことなのかな』って分かってきたところがあり、『ホットギミック』でもその経験が生かせました。亮輝とも、凌君とも梓とも、目の前の人たちと『向き合う』。余計なことを考えずに、楽しみつつも『浸る』。役についても分からないことはほとんどなかったです」f:id:dTrip:20190719195805j:image

「それは山戸監督が、私たちに寄り添うように演出してくださったから。台本通りに撮るのではなく、(俳優)4人の様子まで見ていてくれて、演じながら感じた感情まで拾って、セリフを書き換えてくださるんです。私たちの内側から出てきた感情を無視せず、むしろそこを引っ張り出してくださって。だから分かり過ぎて苦しくなるくらいで、その凝縮感にプレッシャーを感じたりもしましたが、ものすごくやりがいがありました。

山戸監督は映画に対する愛情も、映画を見る人への愛情もすごくて、妥協が一切なかったですね。その分、スタッフさんは大変だったかもしれないですけど、監督は本当にいろんなものを犠牲にして、最前線に立ってくださっていた。だからこそ、『私も一緒になって戦っていかないといけない。ついていくんじゃなくて、横に並びたい』と強く思いましたし、女性に対して、初めて『守ってあげたい』という気持ちになりました。

完成した映画で好きなのは、最後のほうの『私の心も体も私だけのものなんだ!』と叫ぶシーン。『自分自身を大事に』って訴えたくてもなかなか言えないですよね。これが監督の女の子への願い…『そうであっていいんだよ』という思いがこもった“言葉”なんだなと。大事すぎて、そのセリフを言うときはものすごい心拍数でした」


■「これだ」と思った女優業
白石麻衣松村沙友理山下美月ら、今春は乃木坂46メンバーのドラマ出演が相次いだ。堀も『遊戯みたいにいかない。』(第1話)に出演したが、女優業に興味を持ったのはいつ頃からなのか。

「もともと映画やドラマが好きで、人間観察も好きなので漠然と興味はありました。亡くなった祖母にも、小学生のとき『みおは女優におなりよ』と言われたりして。

大きかったのは、メイクさんの言葉ですね。私はよく人から『見るたびに顔が違う』と言われて、それがコンプレックスだったんです。でもあるメイクさんがポジティブに、『毎回違うってことは、役によって違う面を見せられるということ。カメレオン俳優みたいだから、女優さんに向いてるんじゃない?』と言ってくださったんです。そこからドラマや、今回映画を経験させていただいて、『やっぱり私はこれなんだな』って思いました。お芝居が好きで、人に届けたくて。見る人によって解釈が異なる女優さんになりたいんです」

女優経験は、乃木坂46の活動にも生かされているのか。「乃木坂46堀未央奈」としての目標は?

「今までは振りを覚えて踊って、カメラが来たら目線を合わせて…みたいな感じだったんですけど、映画と同じで曲にもストーリーがある。そこに思いを乗せてパフォーマンスすると、『表情が良かった』と言ってもらえるようになりました。そんなふうに、自分なりに世界観を作って入り込むというやり方は、お芝居を通して学ばせてもらえたことかなと思います。

乃木坂46は今、先輩がどんどん卒業して後輩も入って、ちょっと不安な思いがあるとき。私は2期生、中間にいる人間としてもっと発言して、卒業したときに『堀ちゃんがいて良かったね』と思ってもらえるように貢献したいです。

もう一度センターですか? 私はスタートがセンターで、当時は実力も自信もなくて悔しい思いしかないんです。きっと応援してくれた家族もファンの方も、どこかもどかしい感情を残したままだと思う。だから機会があったら、センターで、MVを山戸監督に撮ってもらえたりするとうれしい。きっとあのときとは違う自分がいると思うし、後輩につなげられるものもあると思うので。

でも、どこにいても自分は自分。その時々の役割があるので、今を大事に頑張っていきたいです」


『ホットギミック ガールミーツボーイ』f:id:dTrip:20190719195819j:image

平凡な女子高生の初が、幼なじみの亮輝に弱みを握られて振り回される。そんなとき、人気モデルになった幼なじみの梓が帰ってきて、初と付き合うことに。山戸監督の映像美と詩的な言葉が光る青春映画(公開中/東映配給)(C)相原実貴小学館/2019「ホットギミック」製作委員会

日経エンタテインメント! 2019年7月号の記事を再構成)