吉本「加藤の乱」新契約 若手が「絵に描いた餅」と大ブーイング

朝日新聞出版
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 お笑い帝国・吉本興業を根幹から揺るがす大騒動へと発展した闇営業問題。8月19日には2700(八十島宏行、常道裕史)、スリムクラブ真栄田賢内間政成)、くまだまさしムーディ勝山、ストロベリー・ディエゴら5組7人の謹慎芸人たちが続々と舞台に復帰し、闇営業ネタで笑いを取る一幕も観られた。



 翌20日に放送された「スッキリ」でMCを務める加藤浩次(50)はこれを受け、「こういうとき、舞台のお客さんって温かいよね。ありがたい」とコメント。一時は「今の社長、会長の体制が続くなら吉本興業をやめる」と啖呵を切り、“加藤の乱”とも言われていたが、あれから一転、後輩芸人たちの復帰を心から喜び、祝福した。

 すでに同番組内で「吉本残留」を宣言した加藤だが、今回の闇騒動問題はこれで幕引きとなるのだろうか? 吉本問題を取材している週刊誌記者は次のように語る。

「加藤さんは大崎会長と直接話し合って専属エージェント契約を提案。その条件を飲ませることで、残留を宣言しました。専属エージェント契約を締結すれば、自分がとってきた仕事を直接することができ、吉本に莫大なマネジメント料を払う必要がなくなると言われています。この契約内容もまだ調整中とのことなので最終決定ではないのですが、簡単に言うと直営業を合法化することができるというものです。平日の帯番組のMCを13年も務め、吉本の稼ぎ頭のひとりになった加藤さんをさすがに無下にするわけにもいかず、また松本人志さんが加藤さんの提案を後押ししたため、大崎会長はこの条件を飲むしかなかったのでしょう。また、加藤さんだけでなく、松本さんや千原ジュニアさんもワイドショーにレギュラー出演しているため、今の吉本が彼らの口を封じるのは至難の業。謹慎芸人の復帰も同様で、とにかく吉本は今、事態の収束に躍起になっています」


 吉本興業は今後、6000人もの所属タレント全員と共同確認書を取り交わすことも発表しているが、その契約をベースに、従来の専属マネジメント契約か専属エージェント契約を芸人が選ぶということになるというのがもっぱらの見方だ。

「専属エージェント契約なんて選べるのは売れている一握りの芸人だけでしょう。まず、エージェント契約を結べば、自費で代理人を雇う必要があり、若手にはそんなカネがあるわけない。つまり、エージェント契約を結べば、代理人などの支払いを勘案して今まで以上のギャラをもらう必要が出てきます。まず、この時点でエージェント契約を結べる芸人はかなり限られてきます。一方で、吉本はテレビの番組制作も数多くしていますから、そうした番組でギャラが高い芸人より安い芸人を使うのは当然でしょう。吉本のマネジャー陣も、従来のマネジメント契約を選んだ芸人の売り込みを中心にやるのは当然なわけですから、加藤さんが提案したこの新契約は若手芸人にとってはなんら機能しない、という可能性もあるわけです」(前出の週刊誌記者)

■復帰を喜ばない吉本若手芸人も

 この専属エージェント契約について吉本関係者はどのよう思っているのか。吉本制作の番組にも携わるある放送作家は次のよう語る。

「吉本所属の若手芸人はこの新契約を聞いても誰も喜んでいませんよ。当然、セルフプロデュースする知恵も財力もないし、ギャラ交渉できるほど売れてもいないヤツがほとんどなので、彼らにとってこの新契約は『絵にかいた餅』でしかない。若手の中には『謹慎芸人がそのまま消えていたら、俺らにチャンスが回ってきたのに』と愚痴るやつもいるほどです。まぁでも、それがお笑い界本来のサバイバルですよね。今後、専属エージェント契約がどのように実を結ぶのかはわかりませんが、ひとつだけ言えることは、売れている芸人はより稼ぐことができ、そうでない若手はギャラが少なくなっていくということ。それを痛感し、吉本を辞めて小さい事務所に鞍替えするやつも徐々に出てきています。宮迫さんも記者会見で『食えない若手のために直営業を残してやってほしい』と言っていましたけど、エージェント契約になって直営業がシステム化されることで、若手はより絶望しているのかもしれません」


 TVウオッチャーの中村裕一氏は、闇営業問題の幕引きを次のように語る。

「写真週刊誌のスクープ記事に端を発した闇営業騒動もひとまずここでひと段落ついた、という感じでしょうか。事務所の処分により謹慎していた芸人たちが次々と舞台に立ち、自らを苦しめた闇営業ネタで笑いを取るという、ある意味、芸人として理想の笑いのカタチを体現する姿は、あの騒動のインパクトからすると想像していなかった人も多いはずです。改めて思うのは、生放送の番組中にあそこまで発言でき、かつ事務所を動かせたのは、キャリアを積んだ加藤さんだからこそできたこと。その男気あふれる姿に胸を打たれた視聴者も多いのではないでしょうか。しかし、今後導入されるであろう専属エージェント契約によって、売れる芸人とそうでない芸人の二極化が加速する懸念も十分あり、ギリギリのラインにいる中堅芸人にとっては厳しい局面が続くことが予想されます」

 果たして、加藤の乱から生まれた新契約は、瀕死状態の吉本興業にとっての突破口となるのか?